2011年2月1日聖マリアンナ医科大学 入試問題解答速報 [CVX-化学発展演習 日記]
こんにちは~ (*^_^*)/
さる2月1日に聖マリアンナ医科大学医学部の入試がおこなわれました。
「昨年はこのブログでも掲載していたのに」という訳で、別ブログに掲載していた解答と簡単な解説を転載します・・・・
第1問 [1] 塩素の同位体
1).35Clと37Clで異なるもの
解答 (ウ) 中性子数
2).35Clの存在比
Clの原子量35.45 = 35.00×(x /100)+37.00×(100-x )/100より
x = 77.50%
解答 77.50%
3).分子35Cl37Clの存在比
35Clと37Cl存在比の積になるが、35Cl37Cl と37Cl35Cl があるの
で2倍することを忘れずに。
∴ (77.5/100)× (22.5/100)×2= 34.875/100より34.88%
解答 34.88%
[2] 緩衝溶液の調整
緩衝溶液は希釈してもpHが変化しないので、表のpH7.40の値を用いる。
解答 A 950mL B 4050mL
第2問 [1] 二酸化硫黄が水に溶けて酸性を示す理由
溶解度は9.4g/100mL(25),亜硫酸のK1=1.3×10-2
解答例 水とSO2+H2O→H2SO3のように反応して、
比較的酸性の強い亜硫酸を生じるため。
[2] 炭酸カルシウムの懸濁液を中和剤として加えたときに気体の発生する理由
炭酸の電離平衡はCO2+H2O⇄H2CO3の平衡定数が1.7×10-3なので、
見かけ上の電離平衡CO2+H2O⇄HCO3-+H+のpK1=6.35となる。
解答例 炭酸よりも亜硫酸の方が強い酸であるので、二酸化硫黄と水
から生じた亜硫酸によって、CaCO3+H2SO3→CaSO3+H2O+CO2のよう
に炭酸が遊離して、二酸化炭素が追い出されるため。
[3] 炭酸カルシウムが炭酸水に溶解する反応式
解答例 CaCO3+H2O+CO2→Ca(HCO3)2
[4] 石灰石から気体を発生させるとき希硫酸を希塩酸の代わりに使用できない理由
石灰石は水に不溶性の炭酸カルシウムであり、強酸を作用させると炭酸が遊離して強酸とカルシウムの塩を生じる。
解答例 塩酸との反応ではCaCO3+2HCl→CaCl2+H2O+CO2の反応で水溶性の塩化カルシウムを生じて反応が継続するが、 硫酸とのCaCO3+H2SO4→CaSO4+H2O+CO2の反応で生じる硫酸カルシウムは水に難溶であり、表面に膜を作って反応を妨げるため。
第3問 [1] アルコール消毒とタンパク質の変性,冷却作用
1).タンパク質の構造を参考にして合成された高分子
解答 (ウ) 6,6-ナイロン
2).ジスルフィド結合はどの化学結合に属するか
解答 (イ) 共有結合
3).ジスルフィド結合を還元剤で切断して得られる官能基の構造と名称
解答 -S-H
チオール基(メルカプト基,水硫基,スルフヒドリル基)
4).水素結合とは何か
解答例 正に帯電した水素原子と負に帯電した陰性の原子間に働く、
主として静電的に働く結合で、分子間の水素結合では極性の
大きい分子間のものほど結合力が強い。
別解(水素結合でHと結合する元素名を明記した例)
電気陰性度が大きいフッ素,酸素,窒素などの原子と共有結合して正に帯電した水素原子が,その水素原子と直接共有結合していないフッ素,酸素,窒素などの原子と静電気力で引き合うこと。
5).コロイドとコロイド溶液
解答例 媒質中に分散している微粒子の直径が1nm(10-9m=10-7cm)
から103nm(10-6m=10-4cm)の範囲にあるものをコロイド粒子といい、
コロイド粒子が分散している分散系をコロイドといい、媒質が液体
のコロイドをコロイド溶液と呼ぶ。
6).アルコールが冷却作用を示す理由
解答例 液体の蒸発は吸熱変化であり、エタノールは揮発性が高いため単位時間あたりの蒸発量が大きく、多くの蒸発熱を吸収するため。
[2] 血漿について
1).血漿のpHの大きな変化で死に至る理由を酵素の働きと性質より説明
解答例 酵素は活性中心という立体構造により、特定の基質
(反応物質) に特異的に作用する基質特異性がある。
立体構造を構成する結合の内、酸性アミノ酸と塩基性
アミノ酸の残基は、中性付近でイオン化してイオン結合
しているがpHが大きく増減するとイオン結合が切れて
立体構造が不可逆的に変化(変性)して、酵素作用を示さ
なくなる(失活する)。生命活動は酵素反応の積み重ね
なので、酵素が失活すると生命活動に支障を来すため。
2).体外に血漿を放置した場合のpHの変化
血しょうは炭酸と炭酸水素ナトリウムの緩衝溶液である。その水素イオン濃度の式は[H+]=[H2CO3]K/[HCO3-]の式で表され、[H2CO3]/[HCO3-]は炭酸と炭酸水素ナトリウムの比とほぼ等しい。体内の方が二酸化炭素分圧が高いので、体内の方が二酸化炭素分圧が高く、[H2CO3]が増加して[H+]=([H2CO3]/[HCO3-])×K1も大きくなる。よって、二酸化炭素分圧の低下に伴い、水素イオン濃度が低下する。
解答 (ア) 増加する
3).胃液(pH2.0)の[H+]は血漿(pH7.4)の何倍か
10-2÷10-7.4=4.0-1×106=2.5×105倍
解答 2.5×105倍
4).緩衝作用とは何か
解答例
外からの作用に対して、その影響を和らげようとする性質
を持つ溶液
別解
純水を加えてもpHが変化せず、少量の酸や塩基を加えても
pHが変化しにくい溶液
[3] グルコースについて
1) この単糖は比較的水に溶けやすい。その原因は、ある基を数多く持っているからである。その基の構造と名称を書きなさい。ただし、構造は原子間の結合を省略しないで表すこと。
解答例
構造 -O-H 名称 ヒドロキシル基 (ヒドロキシ基,水酸基)
2).脱水縮合とは何か
解答例
2つの官能基の一部が分離して水を生じ、同時に残った2つ
の官能基の部分が結合して新しい官能基が生成する反応。
3).浸透圧とは何か
解答例
溶媒分子を通すが溶質分子を通さない膜(半透膜)を隔てて、
純溶媒と溶液を接すると、溶媒側から溶液側への溶媒が浸透
する。この浸透を止めるために、溶液側にかけるべき過剰の
圧力で、希薄溶液では絶対温度と溶質のモル濃度にほぼ比例
する。
4).グルコースより高分子状態で貯蔵した方が浸透圧の上昇を抑えられる理由
解答例 浸透圧は溶質粒子の濃度(mol/L)に比例するため、同じグルコース単位があっても、多数のグルコースが重合して高分子を形成している方が、溶液中の濃度が小さく、浸透圧も小さくなるため。
[4] 無機塩類について
1) 塩化ナトリウムの化学式と選択した理由。
解答 (ウ)組成式
解答例 塩化ナトリウムは陰イオンの塩化物イオンと陽イオンのナトリウムイオンからなるイオン結晶であり、NaClは化合物中の元素の最も簡単な比を表している。また、イオン結晶では明確な分子は存在しない。
2).Na+が水和される仕組み
解答例
水分子は電気陰性度の大きい酸素が負に,電気陰性度
の小さい水素が正に帯電している。ナトリウムイオン
が水に溶けると、水分子は酸素をナトリウムイオンに
向けてクーロン力により結合して取り囲む。
これが水和である。
[5] 脂肪の構造と性質
1) ミセルとは何か。
解答例 親水基と疎水基を有する物質を水中,または有機溶媒中に入れると、溶媒と混じり合わない性質を持った部分を内側にして会合する。この会合による構造をミセルという。
2) 中性脂肪を構成するエステル結合の構造。
2).脂肪を石けん水に入れて振ると乳濁液になる理由
解答例
水と脂肪を混合しても、表面張力によりすぐに分離してしまう
が、石けん水では水と脂肪の境界面に親水基と疎水基を持つ
セッケン分子(イオン)が配列し、分散したまま安定に存在させ
られるため。
[6]
1)フェーリング反応は何反応か
解答 (ウ) 還元
2)タンパク質を除いた血漿がフェーリング液を還元する理由
解答 (イ) グルコース
3) 2)の性質を有する官能基の構造は原子間の結合を省略しないで表すこと。
名称 アルデヒド基
4).フェーリング反応によって生成する官能基の構造と名称
名称 カルボキシル基 または カルボキシ基
聖マリは、ここ数年ほぼ同じ内容の問題が繰り返し出題されていますね。水素結合に関する説明問題は、しばしば出題されるところですから、しっかり確認しておきましょうね。
2011年1月27日 日本医科大学医学部の解答速報 [CVX-化学発展演習 日記]
こんにちは~ (*^_^*)/
さる1月27日に日本医科大学医学部の入試がおこなわれました。
今年は別ブログに教育関係を移したのでそちらに掲載したのですが、「昨年掲載していたのに?」というという訳で、解答と簡単な解説をこちらにも掲載します・・・・
[Ⅰ] 問1 K ∵ 1族元素の単体は周期(原子番号)が大きいほど融点が低くなる。
問2 Ca ∵ マグネシウム族(Be,Mg)は炎色反応しない
問3 Ne ∵ 同一周期では2,3族と15,16族を除き原子番号が大きいほどイオン化エネルギーが大。
問4 He ∵ 希ガスは単原子分子で、Heの沸点が最も低い
問5 アルゴン∵ 単原子分子は閉殻構造をもつ希ガスの特徴。空気の組成はN278%,O221%,Ar1%。
問6 H2S ∵ H2Oは水素結合で異常に高い沸点を持ち、他は分子量の増加と共に沸点が上昇。
問7 Br2 ∵ 「還元されにくい = 酸化力が弱い」であり、酸化力はF2>Cl2>Br2。
問8 LiF ∵ アルカリ金属のハロゲン化物は水溶性が高いが、LiFは0.27g/100mLと例外的に小さい。
問9 a P4O10 ∵ 黄色で自然発火する単体は黄燐P4であり、P4 + 5O2 → P4O10 と燃焼する。
b H3PO4 ∵ 酸化燐(Ⅴ) P4O10は強い脱水作用を有する無色の昇華性固体であり、水とP4O10 +6H2O → 4H3PO4 のように反応してオルトリン酸を生成する。
問10 化学式:O3 名称:オゾン
三原子分子で酸化力が強い淡青色の単体は、酸素O2の同素体のオゾンと推定されます。その臭いは、Wikipediaには「生臭い特徴的な刺激臭」と記載されていますが、(化学辞典/p200-森北出版),(化学図録/数研出版),(化学Ⅰの教科書/東京書籍 他)などの書籍には「特異臭」と記述されています。
問1 結合の名称:配位結合 総称:配位子
問2 AgCl 問3 x=6,y=4 問4 1mol
問5 [M(NH3)6]3+ または [M(NH3)6]3+・3Cl-
問6 6 問7 コ 問8 3
∵ Cl-とNH3がトランスの位置にくるもの,シスの位置にくるものがあり、
シス形には対掌体がある。
[Ⅲ] ア-0.100×5.00÷(50.0+a), イ-0.200×(25.0-b)÷(50.0+b),
ウ-CH3COO-, エ-CH3COOH, オ-(い),カ-(5.00-0.200b)K÷0.200b,
キ-12.5, ク-pK または-log10K, ケ-0.100, コ-(50.0+b)KW÷(0.200b-5.00)
[Ⅳ] 問1 ア-配列順序,イ-ホルモン(ペプチドホルモン,ポリペプチドホルモン,単純タンパク質),ウ-4,エ-右,オ-αヘリックス,カ-βシート,キ-ミオグロビン,ク-ヘモグロビン,ケ-鉄(鉄(Ⅱ)イオン)
問2 異なる
∵ インスリン製剤は、原料となる動物種(牛,豚,人)によって分類され、2つのポリペプチドの内、豚インシュリンはBペプチドの30番目のアミノ酸が異なるだけだが、牛インシュリンはそれ以外にAペプチドの8,10番目のアミノ酸(計3カ所)が 異なる。生物選択の生徒は問1,2は特に難しくなかったとのことですが、周囲の物理選択者の答案用紙は白紙部分があったとか・・・・。高校での化学の履修 範囲から外れていますが、物理選択者が入学後に生物で苦しむ話はよく聞くので、大学側からの「医学部に来るなら生物をやっておけ」というメッセージかもし れませんね。
問3 ③-⑨
∵ ペプチド結合は平面構造をしており、カルボニル基C=Oの酸素原子とイミノ期N-Hの水素原子は反対側を向いている。図では、カルボニル基とイミノ期の向きが同じなので、αヘリックスにおける水素結合と考えられる。高校教科書(東京書籍など)及び化学図録(数研出版)にも記述されておらず、受験生の知識範囲としては③-⑨,④-⑧の2つのパターンが考えられる。
問4 イオン結合(クーロン力,静電気力),疎水結合
∵ 「相互作用」なので、ジスルフィド結合(共有結合)は含まないと判断。
問5 (1)100M-18×99=100M-1782 ∵ (重合度)-1のH2Oが取れて縮合している。
(2)1.00×10-3mol ∵ NH3をn molとすると、n ×1+(1.00×10-1)×10.0/1000×1=(5.00×10-2)×20.0/1000×2となる。
(3)8.9% ∵ (1.00×10-1)×14×100÷0.157=8.917(%)
(4)ⅴ
∵ 各アミノ酸ペプチドの窒素の含有量は(窒素の占める式量)÷(アミノ酸残基の式量)×100より、ⅰが24%,ⅱが20%,ⅲが22%,ⅳが11%,ⅴが8.9%となる。ただし、フェニルアラニンとグルタミン酸の分子式と分子量に誤りがあり、フェニルアラニンの正しい分子式C9H11NO2(正しい分子量165),グルタミン酸の正しい分子式C5H9NO4(正しい分子量147)となり、正しい分子量で計算すると、(3)で算出した数値に合うアミノ酸が(ⅰ)~(ⅴ)の中に存在しなくなる。
- 作者: 和田 秀樹
- 出版社/メーカー: 新評論
- 発売日: 2008/03
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- 直前対策講座を開催中です。2011年の入試問題を踏まえて、2011年の受験対策を。
春期講習始まる [CVX-化学発展演習 日記]
本日から春期講習開始です。
C3VXの春のテーマは理論化学
C3Jと若干リンクする感じで、問題を設定しています。
原子の構造・周期表・化学結合(この辺りは記述が多い)
基礎事項説明型の記述訓練は、東大の他に聖マリや札幌医の過去問が参考になります。
ちなみに周期表情報はここが良いでしょう。
分子間結合の記述では、水素結合に関するものが頻出です。定量的な説明ができるように主な元素の電気陰性度を覚えておくことをお薦めします。
固体・結晶(ここは計算中心)
基本パターンで分類してみると、意外と覚えるべきことは少ないですよ。隙間や断面問題まで演習しておけば、完璧でしょう。今回は、ルチルやウルツ等を扱います。
気体・蒸気圧(東大では頻出分野で計算以外にグラフ作図があります)
気体は、実質的には理想気体の状態方程式だけですから、演習を重ねて訓練するに限ります。
ただし、ひたすら状態方程式に代入するのは考えものです。今年の東大の問題では「計算が多くで時間が足りなかった」との声を耳にします(合格報告に来た生徒談)
例えば、第1回のヘンリーの気体溶解の法則なら気相と液相の体積比を活用すると計算が楽になります。
化学平衡(窒素酸化物やヨウ化水素などの均一気相反応が基本ですが、電離平衡や溶解度積の他に、今年も東大で出た分配比・分配平衡も要注意です)
酸・塩基(比較的簡単な分野ですね)
ちなみに、酸・塩基指示薬(pH指示薬)は、それ自体が酸です。
マグネシウムの燃焼 [CVX-化学発展演習 日記]
今回は、気体の発生の問題から1つ・・・・
「窒素と酸素から成る空気を密閉した容器内で、Mgを燃焼させ、生成物を塩酸に溶かした後、水酸化ナトリウムを加えて加熱すると何が発生するか?」
マグネシウムMgはイオン化傾向が大きく、酸化されやすい固体です。
マグネシウムリボンは、二酸化炭素中でも燃焼します(Movie)。
また、空気中で閃光を発して燃えて白い灰が残ります。
さて、この白い灰が酸化マグネシウムMgOだけであれば、塩酸に溶かした後、水酸化ナトリウムを加えても何も起こりませんよね。
2Mg+O2→2MgO
MgO+2HCl→MgCl2+H2O
日本化学会主催の日本化学会化学教育部会による昭和51年度九州地区化学教育研究協議会のレポートで「マグネシウム燃焼時の窒化マグネシウム生成について(大口市立山野中学校 大窪是男氏)」により詳細に発表されています。
その報告によると、
Mgの加熱燃焼実験において、教科書の(空気中でMgに点火してMgOを生成する)方法では、生成物に酸化マグネシウムMgOだけでなく、Mg3O2が混入する為、組成が一定とならないこと。
Mg3O2の生成量は、Mgが0.32gのとき11%,Mgが0.41gのとき35%となること。
窒素気流中では92%以上のMg3O2が生成されること。
が確認できたとしています。
よって、
マグネシウムを窒素存在下で燃焼させると、一部が3Mg+N2→Mg3N2の反応により窒化マグネシウムになる。
窒化マグネシウムは塩酸により分解され、塩化マグネシウムと塩化アンモニウムとなる。
強塩基のNaOHによる追い出しによりアンモニアが遊離して加熱すると気体として発生する。
となります
さて、話はまったく変わりますが、
東大の数学はWilliam Lowell Putnam Mathematical Competition に元ネタがあるらしいと本日知り合いの人からの情報あり(出典はこちらのページへ)
実験室内で水素を生成・単離する方法 [CVX-化学発展演習 日記]
今朝はとっても良いお天気で、池袋から富士山が綺麗に見えました。
すっかり山の稜線に隠れるまで、真っ白に雪化粧して、美しかった~
さて、本日の問第は
「実験室内で水素を発生し、単離する方法を簡潔に示せ」
です。
けっこう沢山あるんですよ。
工業的な方法も入れれば、それこそ・・・
分離の実験方法も含めて考えてみますと
・二叉試験管やキップの装置,ロート付き平底フラスコで
水素よりイオン化傾向の大きい金属(鉛を除く)に酸化性のない酸を作用させる。
例:亜鉛と希硫酸を反応させる
鉛は表面に水に不溶性の塩を生じてすぐに反応が止まってしまい溶けない。
・イオン化傾向の大きい金属と水を反応させる。
① アルカリ金属,アルカリ土類金属と冷水との反応
例:インクの古瓶に約半分量の水を入れ、小豆大のナトリウムを水に入れる。
切り込みを入れたコルク栓をはめて水中に沈め、倒立させた水を満たした集気瓶に
水素を捕集する。
② マグネシウムと沸騰水の反応
例:マグネシウムを沸騰水に入れる
③ 鉄よりもイオン化傾向の大きい金属を赤熱し高温水蒸気と反応
例:鉄を水蒸気中で赤熱する
・両性元素にアルカリ水溶液を作用させる。
例:亜鉛と水酸化ナトリウム水溶液を反応させる
・水を電気分解する。
純粋は電気を導かないので、希薄な水酸化ナトリウム水溶液か希硫酸を電気分解する。
電極は白金電極や黒鉛を用いる。
・水性ガスから分離する。
水性ガスを精製する。
灼熱したコークスCに水蒸気を通じるとC+H2O⇄CO+H2-28.1kcalの反応により、
COと水素の混合気体(水性ガス)が生じる。これを加圧下で水洗した後、液体空気で
冷却してCOを除去し、残ったCOを加熱したソーダ石灰と反応させてCO+NaOH→HCOONaと
ギ酸ナトリウムを生成して取り除く。
・メタンの熱分解
メタンを高温に加熱してクラッキングする。2CH4→C2H2+3H2-95.5kcal
アセチレンは銀アセチリドなどの形で取り除く。
これは、工業的には天然ガスのクラッキング(熱分解)によるアセチレンの製法です。
など、色々とあります。
実際には、工業的に大規模につくられていますので、大量に使用する場合はタンク(Bombe)を
買ってきて使うことも多いのですが、これは入試では書けませんね。
ちなみに、水素は分子が小さいため、鋼鉄の中に浸透して鋼鉄中の炭素と反応するため、
水素と接している鋼鉄は次第に脆くなっていくため、注意が必要です。
水素を詰めたタンク(Bombe)は、頸部または全体が赤く塗ってあります。
水素の捕集
・水に溶けにくいので水上置換
・空気より軽いので、塩化カルシウムで乾燥した水素を上方置換
不純物は、各不純物の性質に添って取り除きます。
・水蒸気ならば乾燥剤(水素は中性気体なので濃硫酸やソーダ石灰等どの乾燥剤を使っても良い)
・酸素ならば加熱した銅網(酸素がくっついて酸化銅(Ⅱ)になり取り除かれる)
・塩素など酸性気体ならばソーダ石灰(中和して塩になる) などなど
問題集では、1つの気体の製法を、こうやって何種類もピックアップするようなことは無いので、
自分でノートに整理していくと良いでしょう。
難関大の入試には、独自の工夫も必要ですよ。
ちなみに、世の中には「水素水」なる商品があるらしく、「活性水素水」を飲むと気分爽快で健康になる(アンタは燃料電池車か)らしいです。
しかも「分子式H4O」なるものまで登場。
マグネシウムと冷水で水素発生!!
水溶液がアルカリ性になったと自慢していますが、水素は中性気体ですから、水に溶けても塩基性になる筈がない。それは菱苦土鉱(りょうくどこう)を焼いて作った酸化マグネシウムMgOが水にわずかずつ溶けてMg(OH)2になっただけなのでは?
化学の基礎から勉強し直して欲しいですね。
こんなのに引っかかる人が居ること自体、日教組(YouTube)が主導する公教育の理系軽視の結果ですね。
スルファニル酸 [CVX-化学発展演習 日記]
本日の入試問題から、
p-アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸)を取り上げてみます。
本文:
「ベンゼンを濃硫酸と濃硝酸存在下で加熱して得られた生成物を、ニッケルを触媒として還元して化合物Aを得た。さらに化合物Aに濃硫酸を加えて加熱することにより、二置換芳香族化合物であるスルファニル酸を合成した。次に(ア)スルファニル酸を水に溶解させた後、氷水中で冷やしながら塩酸と化合物Bを加えて反応させ、ジアゾ化合物を得た。その後、このジアゾ化合物に塩酸酸性条件下でジメチルアニリンを冷やしながら加え、かくはんすると赤色の沈澱が析出した。最後に、そこに水酸化ナトリウム水溶液を添加することで、(イ)オレンジ色の化合物を得た。」
もちろん、
「ベンゼンを混酸でニトロ化して生じた生成物」は「ニトロベンゼン」であり、
「ニトロベンゼンを還元して生成した化合物A」は「アニリン」ですね。
「アニリンを濃硫酸でスルホン化」して生じたのが「スルファニル酸(p-アミのベンゼンスルホン酸)」です。「二置換体」との記述があるので、スルホン酸基とアミノ基が独立して別個にベンゼン環に付いていることがわかると思います。
ちなみに、「アミノベンゼンスルホン酸(アニリンスルホン酸)」には、o(オルト),m(メタ),p(パラ)の3つ異性体があり、それぞれ「オルタニル酸」「メタニル酸」「スルファニル酸」という固有名詞があります。
塩基性基のアミノ基と強酸性基のスルホン酸基を持つアミノ酸の一種なのに、いずれも冷水に溶けにくく、炭酸ナトリウムを加えてナトリウム塩にして水に溶かすのが一般的です。
この問題でも、
「スルファニル酸は水にほとんど溶解しないため、下線部(ア)の操作を行うためにはある化合物を添加する必要がある。添加する化合物とその際に発生する気体の組み合わせとして正しいものはどれか」
という設問がありました。
スルファニル酸は、抗菌剤の一つであるサルファ剤の原料にもなる物質です。
サルファ剤の一つのスルファニルアミドは、
「アニリンに無水酢酸を作用させてアセチル化」して「アセトアニリド」にし、
「アセトアニリドをスルホン化剤でスルホン化」したのち
「アンモニアをスルホン酸基にくっつけ-SO2NH2」とし、
最後に「希塩酸と加熱してアセチル基を外す」と生成します。
さて、
「スルファニル酸に化合物Bを作用させてジアゾ化」するのですから、
化合物Bは亜硝酸ナトリウムです。
「ジアゾ化合物をジメチルアニリンとカップリング(アゾ連結)」して生じる下線部(イ)の
オレンジ色の化合物は、アゾ色素の「メチルオレンジ」です。
そう、この実験は「メチルオレンジの合成」だったんですね。
メチルオレンジは、pHにより中央のアゾ基が水素イオンとくっついて塩基性色(黄)から酸性色(赤)へと変化します。
入試問題では、最近、スルファニル酸の出題頻度が増えていますので、その構造と反応を覚えておくと良いでしょう。
今年の入試問題より タンパク質の二次構造 [CVX-化学発展演習 日記]
絹はタンパク質で出来ています。
だから、食べられる絹製品も販売されています。
2月25日の入試問題では、次のように出題されていました。
「絹は、カイコがつくるまゆ(繭)などから得られる動物繊維である。まゆから取り出される1本の
まゆ糸は、2本の( ア )の繊維が( イ )によっておおわれた断面構造をしている。まゆ糸を
熱水で処理すると、( イ )が溶け出して( ア )を主成分とする絹糸が得られる。羊毛は、表面
がうろこ状で、断面が円形であり、( ウ )が主成分である。一般に、タンパク質を構成するポリ
ペプチド鎖は、( エ )や( オ )などの二次構造をとる。これらの二次構造は、ペプチド結合の
>N-H基と>C=O基とが、ポリペプチド鎖間や同一のポリペプチド鎖内で( カ )結合することに
よって形成される。繊維状タンパク質では、( エ )は( ア )に、( オ )は( ウ )によく見られる。」
[解答]
(ア) フィブロイン (イ) セリシン (ウ) ケラチン (エ) β-シート
(オ) α-ヘリックス (カ) 水素
この問題では、フィブロインとケラチンの二次構造の違いについて出題されています。
このブログへはアップ済みですが、2月2日の聖マリの入試でも
「アルブミンとペプシンはともにタンパク質であるが、両者の構造には違いがある。その違いを1行
で説明しなさい。」として
「アルブミンは主にα-ヘリックス,ペプシンは主にβ-シートの二次構造をもつ」
ことが出題されていました。
狂牛病の原因物質として話題になった正常プリオンと異常プリオンの違いも、二次構造の違い
とされています。
個々のタンパク質の二次構造の違いについては教科書では詳しくは取り上げられていませんが、
化学図録などの副教材には記載されているので
今後も大学入試で出題されることが予想されます。
主なタンパク質の構造について整理しておくと良いでしょう。
ちなみに、狂牛病のタンパク質病原体説については
「プリオン説はほんとうか?(講談社/福岡伸一著)」など否定的な見解も出されています。
2月21日 C3VX第2回選抜試験 [CVX-化学発展演習 日記]
いよいよ、国立二次試験が差し迫ってきました。
今日は本当に良い天気で、電車で移動するのがもったいなかったですね。
梧桐の愛車は、ブロンプトンの真っ赤なM3R。
都内は自転車で走るに限りますね(ただし通行区分は守りましょう・歩道は人が優先ですよ)。
さて、今回の選抜テストは、
1 二つの容器をつかった 「理想気体の状態方程式」に関する計算問題
2 酢酸と酢酸ナトリウム 「弱電解質の電離平衡,緩衝溶液,塩の加水分解」
3 硫酸銅(Ⅱ)水溶液 「水溶液の濃度,電気分解」
4 ホウ素と塩素 「原子の構造,同位体,原子量,分子量」の計算問題
が出題されていました。
1,2はC2Jでは抗議済みですが化学Ⅱの範囲なので、高校での化学の進度が遅い人には
厳しかったかも知れませんね。
点数が両極端に割れていましたから・・・・。
ただ、得点率の低かった人は、ともに
化学Ⅰの範囲からの出題である3,4のデキも悪かったので、出題範囲とは関係ないのかも知れません。
せめて、化学Ⅰの範囲をしっかりと押さえて、確実に点が取れるように、高校で使っている「リードα」
などの基本問題集をやり込んでおいて欲しいですね。
もっとも、数学や国語などのベースとなる科目の学力がしっかりしている人は、
3年生の夏からの理科の伸びが著しいので、今できなくても落ち込む必要はありません。
化学は復習の科目なので、やった範囲をしっかり復習していれば、偏差値80くらい簡単に到達できます。
「東大の過去問 25カ年」特訓 [CVX-化学発展演習 日記]
本日は、朝10時から夜10時まで
東大受験生の記述対策でした。
生徒のやってきた「東大の過去問 25カ年」の答案を、
本人の前で添削指導したのですが、
記述では如実に理解度の差がでますね。
特に、
・理論化学の反応の原理
・無機化学
・有機化学の実験操作
での差が顕著でした。
また、
添削指導の前に、各自で自己採点させておいたのですが、
記述の採点について、全体的に配点が甘めでしたね。
要するに、自分では「できた」と思っているが、プロの目で見ると「出題意図に答えていない」という
部分がけっこうありました。
特に、「2つの事柄を対比すべき問題」で「一方しか述べていない」とか「」対比になっていない」
という記述が多いですね。
記述については、独学でやっても成果が上がりにくいので、優れた指導者に自分の答案を直接
添削指導して貰うことが必要ですね。
C3VXの試験に望むもの [CVX-化学発展演習 日記]
朝には雪が降っていました、積もることなく、午後には平穏な日々です。
さて、
Z会東大マスターコースの頂上講座。
Z会Enaの魂を引き継いだC3VXの第2回 選抜テストが、来る2月21日に実施されます。
化学に自信のある諸君には、医学部志望でなくても是非とも受験して欲しいですね。
頂上講座と言っても、SEGと違って入試から外れて変に難しい趣味性の講座ではないので
実用的ですよ。
前回の試験内容は、
1.理想気体の状態方程式 2つの容器を連結したもの
2.化学平衡(均一気相反応) ハーバー・ボッシュ法
3.電気化学 鉛蓄電池の放電
でした。
選抜試験の目的は入試試験と同様、講座を受講した際に授業について来れるか否か、の判定です。
まず、
化学Ⅰ 理論化学分野
および
化学Ⅱ 化学平衡,気体の性質(理想気体の状態方程式),溶液の性質,化学結合
を7割方(選抜試験の得点として)以上理解していることです。
C3VXの受講を検討している皆さんは、この分野をしっかり復習しておくと良いでしょう。